シェフ貫田の北海道・うまうま大辞典
北海道のおいしい食べものや熱心な生産者を紹介する旅日記
2014年8月
- 2014/08/31[この記事のエリア] 帯広・十勝
- 十勝の海で塩づくり!
よく晴れた8月下旬の十勝の海
みなさん、十勝に海があることを、ご存知ですか。
知らない道民もいらっしゃると思います。
先日、十勝の最南端・広尾町で
海水から塩をつくる事業のご指導に行ってきました。
「食材王国」の十勝は、
小麦や大豆などの原料から、
砂糖やパン酵母などの調味料に至るまで、
幅広い食材を産出する地域です。
ところが、肝心の食塩だけがなく、
オール十勝の食品がつくれなかったため、
有志の声を受け、地元の商工会議所や信用金庫などが
コラボして「十勝産しおプロジェクト」を立ち上げました。
わたくしは、海水塩のつくり方は知っていましたが、
大量に作るのは、初めてでしたので、貴重な体験でした。
<塩のつくり方>
塩は、ただひたすら煮詰めてつくります。
取水したのは、広尾町音調津(おしらべつ)地区で、
煮た場所は、水族館の跡地でした。
海水を沸かす
海水400㍑を、直径2㍍深さ70㎝の大釜に入れます
海水の塩分濃度が3.0~3.5%だとすると、塩は12~14㎏とれる計算です
煮詰める目安
10倍の40㍑まで煮詰めると、30%ほどの濃縮海水になります
*写真は、海水を40㍑入れて指4本で示し、棒に印をつけておきます
燃料点火
燃料の材木に点火します。
テレビ局、新聞社のみなさんもたくさんきてくれました(^o^)/
この後、ふたをして沸騰させ、沸いたらふたをはずして水分を飛ばします。
*点火と取水前には、拝礼を行って、水や火の神様にご挨拶いたしました
不純物除去
1/5くらいになったら、表面に浮いてきた不純物を取り除きます。
漉したら、小鍋(140㎝)に移して、さらに煮詰めます。
煮詰める
小鍋で10倍くらいに煮詰めると、
水分が茶色く色付いて「にがり」になり、
鍋の縁には、びっしりとカルシウム分が付着しています。
Nacl結晶化
もう少し煮詰めると、急にどろっとしてきます。
白い結晶が底に溜まっていて、すくってなめてみると塩の味!
周囲からは「おーっ!」と歓声が上がりました。
仕上げ
焦げ付かないよう、さらに煮詰めます。
この後、シェフは時間切れのため、帯広に向かいました。
残りの工程
ほどよいところで漉して、塩の結晶と水分(にがり)を分け、
結晶は少し水切り、乾燥させます。
今回、塩製の専門家として参加された、
苫小牧高専・教授の岩波俊介さん(右)。
左は、十勝の産業振興策に明るい、中村利雄さん
関係者のみなさんと記念撮影
豆腐製造のナカタ食品、林製パン、食品製造のヤマチュウ、
広尾町役場、地元漁協、帯広信用金庫、帯広商工会議所、
広尾町商工会ほかのみなさんです。(敬称略です)
広尾町の豊似川(とよにがわ)
この川は、町内でも一番濃い青色をしています。
川水がとても甘く、ペーハーも7.0以上でアルカリ性のよう!
味は、この赤みを帯びた石の味にいちばん近いように感じました。
将来、広尾町で食べる刺し身は、
しょうゆでなく、塩を振って食べる
「広尾・しお刺し身」や「広尾・しお寿司」に
なることを期待しています。
*夕食で同席した村瀨町長も絶賛してくださいました。
もしかすると、マグネシウムやカリウムの多い食塩で
血流がよくなって、健康になる町民が増えたら、うれしいです。
*地元の栄養・保健関係者の実証データも期待しています!
道内でも歴史の古い広尾町の
十勝神社には、
塩の神様もお祀りしているようで、
言い伝えの物語性もバッチリの町です。
では、今後の「十勝の塩」にご注目ください!!
2014/08/31 17:28帯広・十勝コメント(2)
- 2014/08/18[この記事のエリア] 日高・えりも
- えりもで新商品発表会!
えりも銀聖のマリネ、ハーブのサラダ仕立て photo by chef N.
8月8日えりも町で、開発中の新商品を
発表する試食会が町福祉センターで開催されました。
試食したのは、わたくしが指導してきた、
町内産のえりも短角牛と高級秋サケ・銀聖を活用した、
商品化「途中」の製品で、今後、名称や包装を工夫して
商品化「予定」のものです。
別の日に撮影した、同じメニュー(ファームレストランまぶりっとにて) photo by chef N.
試食会では、短角ピラフや銀聖マリネなど8品を
参加した町民ら約40名に楽しんでもらいました。
会の主催は、サケ漁業・水産加工業の佐藤勝さんと
ファームイン経営の高橋祐之さん。
2人は、えりも町商工会を通じ、国の
「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」を
利用して、貫田シェフの派遣となりました。
6、7月に2社を現地指導し、高品質の試作品ができたことから、
8月の3回目に発表会を催すことになったのです。
では、料理を紹介します。
えりも銀聖の3品盛り合わせ
えりも締めサケ ~右上
えりも鮭マリネ ~右下
えりも鮭のコンフィ~左上
えりも鮭ピラフ
短角牛コンビーフの3品盛り合わせ
ほぐし身の牛脂和え ~右下
スライスのマスタードソース~左上
ほぐし身のサラダ ~右上
えりも短角ピラフ
えりも銀聖の3品盛り合わせ
えりも締めサケ
~解凍したサケの身を塩と酢で締めた「締めサケ」です
えりも鮭マリネ
~塩と砂糖で漬け込んだサケの身を薄く切ったもの、
えりも産アイコ・トマトのサラダ仕立てにしています
えりも鮭のコンフィ
~ナタネ油で低温調理したサケの切り身とほぐしたもの(手前)
えりも鮭ピラフ
~サケのあらでブイヨンを取り、バターで炊き上げたピラフ
えりも岬に沈む夕陽をイメージした赤いピラフです!(by辻局長)
短角牛コンビーフの3品盛り合わせ
スライスのマスタードソース添え
ほぐし身の牛脂和え
ほぐして同じ牛の脂を溶かして和えています
ほぐし身のサラダ
ほぐしてソテーした肉をサラダにのせて、マスタード風味のドレッシング
今後、これらが、商品化され、
「何もない!」と思われていたえりも町の「レア土産」として愛用されると
うれしい限りです。
通常、こういった発表会は、
発売直前に行うことが多いと思います。
今回、幅広い年齢層の方が出席してくださったことから、
味つけや包装形態など、さまざまな意見をもらうことができ、
多いに参考に、また、事業者の励みにもなりました。
また、事業の窓口となった、
えりも町商工会の事務局長・辻さんと、ご担当の河合さんには、
業務以外でもバックアップして頂き、ありがたかったです!
えりも町商工会、辻さん(手前)
今回の写真は、えりも町商工会より、ご提供いただきました!(巻頭2枚の写真はシェフ撮影)
そういえば、えりも町は、
出生率の高いまちと聞いていましたが、
一次生産者や商工会スタッフの地道で熱い団結力を感じて、
今まで以上に、まちを応援したくなりました。
みなさんも、これから、おいしくなる
希少食材の日高銀聖と短角牛を召し上がってください。
2014/08/18 10:01日高・えりもコメント(6)